
自分らしいスタイルの暮らしを楽しんでいる素敵なお施主様。
家を建てたセンパイとして、これから家を購入する人たちのヒントになるようなお話をお伺いしてきました!



ポルトガルの旅で出会ったアズレージョ(ポルトガル語でタイルのこと)に魅せられ、現地で制作技法を学び、以来約30年にわたって独自の表現によるオブジェやタイル作品をつくり続けているIさん。azul(青色)を基調とした色鮮やかな作品は、京都駅構内をはじめ病院や大学などの施設にも多く用いられるなど、日本を代表する造形作家として知られている。
かつては葉山に16年暮らしたのち、縁あって京都へ移住し、創作活動を行っていたがさまざまな事情が重なり、関東へと戻ることに。当初は箱根、熱海、湯河原、小田原と色々な場所を探してみるも、Iさんの感性に響く物件がなかなかなかったという。
「どこか懐かしい雰囲気の大磯駅の駅構えを見て、少しピンときたんです」とIさん。そこで大磯近辺を探している時に出会ったのが現在の土地。海までは徒歩3分、大磯駅まで徒歩10分と程よい距離で、住宅街にある静かな環境。「不動産屋に『今朝出た物件です』と言われて見に行き即決。ほぼ衝動買いに近かったですね」と笑う。

土地購入後は知人の一級建築士に設計と監修を依頼し、理想的な図面が完成したものの、施工会社が見つからなかったそう。そんな時、何度か訪ねていた大磯の寿司屋で湘栄建設を紹介されたことを思い出し、すぐに連絡したという。
「注文住宅を手掛ける会社に、別の方が設計した図面をお願いするのは気が引けましたが、湘栄さんは快く引き受けてくださいました。しかも図面そのままでは土地に合わない部分もありましたが、大きさを調整してうまく納めてくれたり、寝室の本棚のデザイン処理も見事。まさに職人仕事そのもので、とても素晴らしかったですね」とIさん。
Iさんが住まいに求めるのは“とにかくシンプルであること”。シンプルであれば何を置いても合うとの考えから、空間自体にいっさいの無駄がなく、そこにIさん自身の作品のみならずさまざまなアーティストの作品が飾られて、住まいのあらゆる場所がさながらアートギャラリーのよう。
さらに収納や棚などはインテリアデザイナーによる造作で、随所にIさんのタイルを散りばめたり、ちょっとした仕掛けが凝らされていたりとアートを感じるデザインとなっているのも面白い。
また住まいであると同時に、Iさんの作品制作の場でもあるため、リビングには多くの資料や書物を収める造作棚、作業しやすいデスク、そして以前より使用していた移動式の作業台などがきちんと使いやすく収められている。

以前はほぼ毎日、海まで散歩に出かけていたが、最近はご無沙汰だというIさん。「外食がてら駅周辺を散歩するのですが、大磯はただ何となく歩いていても歴史ある家や街並みがあったり、山の緑が見えたりと飽きないですね。中でも吉田邸の庭はお気に入りで、四季それぞれで違った景色を眺められるのが魅力です」
近くのカフェでお気に入りの豆を購入したり、野菜や肉もすべて近所の商店を利用、また外食も多くお気に入りの店も何件もあるという。
「お気に入りなんだけど、週に3日くらいでしかも閉店も早いお店もあって。そうしたゆるい感じが“大磯時間”なんでしょうね」とIさんは笑う。
コロナ禍以降は、ポルトガルへ出かける機会がめっきり減ったこともあり、日本の土と釉薬を使ってタイル制作を行うようになったため、作風が大きく変化したというIさん。
「大磯で暮らすことが作品にどんな影響を与えるかは分かりませんが、これからも人の心に響く美しい作品をこの地で作っていきたいですね」